自分や家族の体調不良がきっかけで、小麦アレルギーについて考えるようになった方が多いのではないでしょうか。近年では小麦アレルギーやグルテンフリーの影響などで脱小麦の健康法が多くみられるようになりました。
「小麦は健康に悪いと言う人もいれば、脱小麦は意味がないという人もいて。」
本や論文を色々とみながら勉強しているけれど、調べれば調べるほど不安になる、そんな方が多いのではないでしょうか。
今回はこの ”小麦アレルギー” について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 少しでも役立てていただけたら嬉しいです。
小麦アレルギーの3つ
小麦アレルギーの症状はさまざまです。消化器の不良など重度の症状もあれば、肌荒れ、腹痛などの軽度のものもあります。ここでは小麦アレルギーの疾患を大きく分けて3つ、ご紹介します。
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セリアック:
小麦のグルテンに反応し、消化器の吸収不良などを引き起こす、重度の症状。 -
非セリアックグルテン過敏症:
腸など消化器以外でみられる頭痛、しびれ、かゆみなどの軽度の症状。 -
フルクタン:
フルクトース(果糖)の重合体。小麦の他にもニンニク、ゴボウ、アスパラガス、玉ねぎなどにも含まれる。軽度の消化器による症状。
セリアック病患者は、残念ながら小麦を食べることはできません。この症状の患者は欧米に多くみられ、日本国内では極めて少ない病状です。欧米でのセリアック病患者は全体の約1%と言われています。
セリアック病ではなくグルテンに反応する患者については、いまだに原因が解っていないことが多く、小麦を食べることはあまりおすすめできません。
しかし、近年の研究では小麦拒否反応の症状の多くはフルクタンが原因ではないか、と言われるようになりました。
小麦アレルギーの原因はフルクタン?
フルクタンの影響を確認したアメリカ内科消化器学会の研究があります。
これはセリアック病ではない腹部の不調を感じている「59人」を対象に、フルクタン、グルテン、プラセボのいずれかが含まれた食品をそれぞれ摂取し、どの食品に反応があったのかを調べた実験です。ブラセボとは有効成分がなく効果を期待できない偽食品です。
結果は次のようになりました。
フルクタン24人、ブラゼボ22人、グルテン13人。これは、それぞれの食品摂取後に腹部の不調を訴えた人数です。グルテン摂取後に不調を訴えた人数は3つのうち一番少なかったのです。つまり、小麦アレルギーのほとんどのケースはグルテンではなく、フルクタンもしくはプラセボ効果による ”思いこみ” であると示唆されたのです。
原因は何かを考える。
では、小麦アレルギーに対して、どのように対処すれば良いのでしょうか。
まずは医師と相談の上、自分がセリアック、非セリアックグルテン過敏症、フルクタンのどれに該当するのかを把握しましょう。ここではグルテンを完全に抜く方法や、少しづつ取り入れ改善が期待できる方法をいくつか紹介したいと思います。
1. 小麦グルテンは完全に抜く
グルテンとは小麦に含まれているタンパク質(グリアジンやグルテニン)というのは既にご存知な方が多いのではないでしょうか。グルテンは一般的に、稲科の食物に含まれています。つまり、小麦以外のライ麦や大麦にも、わずかながら含まれています。
アメリカではセリアック病患者が多いことから、グルテンフリーの認証基準があります。グルテンフリー認証の食品を購入するのが一番良いのですが、日本ではグルテンフリー認証や基準があまり進んでおりません。
我が国において小麦グルテンを完全に抜くために、
選ぶポイントは2つあります。
- 調味料に小麦が使われていないか
- コンタミがないか
限りなくグルテンフリーを目指すなら、まず注目すべきは調味料です。「グルテンフリー」「小麦不使用」と謳っていても、醤油やソースなどの調味料に小麦が使用されている可能性があります。特に醤油はさまざまな料理に使用されており、ほとんどの醤油には小麦が使用されています。
現在の日本ではグルテンフリーに関する知見が浅いため、レストランで使用されている調味料や製品パッケージに記載されている食品表示にも注意が必要です。
次にコンタミ(コンタミネーション)です。コンタミとは、「混入すること」を意味します。コンタミ情報は、微量のアレルゲン物質が混入する可能性がある場合に表記されます。
例えば、「この商品は小麦を含む製品と同一ラインで製造しています。」などの表示はよく見かけますよね。
このように、製品そのものに材料として含まれていなくても、コンタミによってわずかながら混入する可能性があります。
現在の日本では、グルテンフリーに関する基準があまり厳格ではありません。また、コンタミ情報の表示義務はありません。米粉はグルテンが含まれていませんが、小麦を使用している部屋で加工・製造されている場合があるので注意が必要です。コンタミ情報がない場合、メーカーに問い合わせることをおすすめします。
2. 低グルテン、低GIを試してみる
血糖値が上がりづらい低糖質パンにおすすめの小麦粉は、全粒粉です。全粒粉には、普通の白い小麦粉には含まれていない皮(ふすま)や胚芽などが含まれており、食物繊維、ミネラルが豊富です。全粒粉のパンを食べることで、グルテン量を抑えることだけではなく、血糖値が上がりづらいので、体調が改善されるかもしれません。
また、ハードブレッドもおすすめです。準強力粉でタンパク量が少なく、長時間の発酵によりタンパク質がアミノ酸に分解されるため、食パンよりもグルテン含有量が低い傾向があります。
3. 品種改良があまりされていない小麦を試してみる
小麦アレルギーを引き起こす原因の一つとして言われているのが「品種改良」です。現代小麦は食文化の多様化と食品工業を背景に、生産・加工のしやすさを求めて品種改良が行われてきました。現代小麦は小麦本来の形態からかけ離れてしまい、私たちの身体がその進化に追いついていないのかもしれません。
あまり品種改良がされていない小麦品種の一つとして、スペルト小麦があります。
スペルト小麦は昔の小麦の形態に非常に近いと言われており、また、さまざまな研究でアレルギーの反応性が低いことが解っています。
4. 酵母を変えてみる。
小麦を食べすぎると腸内の悪玉菌が増加すると言われています。小麦は消化しにくいことが原因で、悪玉菌が増えてしまう食品の一つと言われています。一方、パン酵母は善玉菌が多く含まれています。工場などで生成された酵母ではなく、自家製のパン酵母に挑戦してみることで、腸内環境が改善されるかもしれません。自家製酵母を使用したカンパーニュを食べるとむしろ体調が良くなった!といった声もあります。
まとめ
疾患 | 対策法 |
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セリアック |
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非セリアック グルテン過敏症 |
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フルクタン |
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ここまでざっくりとした提案をさせていただきました。 小麦アレルギーはセリアック、非セリアックグルテン過敏症、フルクタンの3つに大別されています。”小麦は良くない” と警報を鳴らした脱小麦の動きがみられますが、セリアックは極めて稀な症状であることと、小麦アレルギーの原因にフルクタンや思いこみも含まれているということをご理解いただけたでしょうか。
それぞれ、自分はどの症状であるかを医師との相談の上、自分の身体にあった方法で試してみてください。おいしいパンを少しでも多くの人に食べてもらえるように、ベーカリスタは支援します。