「オーガニック認証」「有機JAS認証」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
もしかすると、”健康に良さそう”というイメージだけで終わっている人もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は知っているようで知らない「オーガニック認証」「有機JAS認証」についてのお話です。
最近はスーパーなどでもよく目にするようになったこのマーク「有機JAS認証マーク」は、厳格な有機管理の元に生産された食品にのみ表示することができます。
たとえば有機小麦は、生産方法や化学肥料の制限だけではなく、使用する機械の制限や、製造・加工方法、管理・保存方法まで徹底して標準化されています。
大きく分けて3つ。
・有機の土づくり
・有機小麦の栽培方法
・有機小麦の管理
全ての工程において、必要条件を満たす必要があります。
今回はオーガニック(有機栽培)小麦とはどのようなものか。また、有機小麦粉として市場に流通されるまで、どのような過程を経ているのかをご紹介いたします。
まずは有機の土づくりから 〜有機の土づくり〜
有機小麦は、非常に厳しい審査の元で育てられています。
あまり知られていませんが、そもそも有機栽培を始めようとしても、すぐに始められるわけではありません。小麦の場合、有機栽培を始めてから有機として認められるまで、少なくとも2年以上はかかります。
どんなに手間をかけたものでも1年目の小麦は有機として認められないため、一般的な栽培(慣行栽培)の小麦として分類されてしまいます。
また、農薬や肥料などの制約があるため、昨年度ほどの収穫量が見込める保証もありません。そのうえ、有機栽培として2年以上も認められないので、有機栽培を始めるまでに相当な時間と手間とコストがかかっているのです。
例えば、 昨年度に指定以外の農薬がたくさん使われていた土壌の場合、今年作付けした農作物を”有機”と認めてしまったら、消費者は納得してもらえるでしょうか。昨年度の土壌の影響を避けるため、一定期間が経過されている土壌でなければ有機として認められません。
このように、有機栽培の土作りに必要な条件として「時間的条件」があります。
多年生作物の場合は3年以上、一年生作物・その他の場合は2年以上経過していなければなりません。
多年生作物とは、果樹やアスパラ、お茶など、1年を通して植え替えを必要としないもの。
一年生作物とは、小麦やトウモロコシなど、毎年収穫しては作付けが行われるものです。
ただし、有機栽培をはじめて「6ヶ月以上3年以内」の場合、転換期間中有機農作物として販売できます。
厳しい農薬の基準〜有機小麦の栽培方法〜
次に生産方法についてです。 大きく次のような基準があります。
・有機と認められた種・苗であること
・有機と認められた肥料のみを使用すること
・有機で指定された農薬のみを使用すること
オーガニックは”農薬の制限だけ”と思われがちですが、実は種や苗、肥料も有機として認められたものでなくてはなりません。肥料などの土壌改良剤も、自然由来のものに限定されています。 ただし有機栽培として認められている農薬であれば、使用してもOKです。 農薬の種類・使用量は一般的な方法と比べてもかなり制限されています。
他にも、慣行栽培が隣接する場合は4m以上の間隔を開ける必要があるなど、必要条件はたくさんあります。
生産だけではない!管理も徹底 〜有機小麦の管理〜
有機栽培された農作物にどれほどの時間と労力がいるのか、お分かりいただけたでしょうか。「ここまで徹底されているなんて!」と驚かれたかもしれませんが、管理もとても厳しいのです。
たとえば、「これは有機農作物です。」と偽った場合、どうなるでしょうか。
管理方法が曖昧であれば、簡単に有機でない農作物が流通してしまいます。
有機小麦がどのようにして管理されているかというと、
・格付担当者は有機JASの研修を受けていること
・収穫機械は収穫前に清掃すること
・収穫コンテナの色分けをすること
・製造ラインは指定のものにすること
などがあげられます。
つまり、栽培から製造・加工、販売まで全ての工程が記録されており、消費者はそれを確認することができます。また、その格付業務を行う担当者は、有機JASの研修を受けた上で、正しい方法で記録しなければなりません。
また、機械・器具も同様に、使用する機械を申請する必要があり、有機として認められたものでなくてはなりません。有機農作物を取り扱うということは、それなりの初期費用もかかります。収穫機械などの大型機械の場合は、収穫前には必ず清掃する必要があり、農作物は有機の指定を受けた色分けされたコンテナに入れます。非有機農作物との混同を避けるためです。
農家さんだけではありません。食品関連事業者も同様です。
有機小麦の場合、製粉される製造・加工ラインも有機専用でなければなりません。これも、非有機小麦粉との混同を避けるためです。
有機JAS認証マークで全て記録〜有機小麦の管理〜
全ての有機食品には、有機JAS認証シールや、パッケージに「有機JAS認証品」が表示されています。
そこをよく見てみると、何桁かのロット番号が書かれていることがあります。 その番号などをたどると、 いつ・どこで・誰が行ったのか、生産から製造・加工、販売まで全ての作業工程をたどることができます。
ここまで厳重に管理されている有機食品、これなら私たちも安心して購入できますね。
まとめ
・オーガニックは”無農薬”ではない
・有機JAS認証品は生産から販売まで全ての記録されている
・有機JAS認証品はたくさんの必要条件を全て満たしている
「オーガニックは無農薬である。」と勘違いされがちですが、 今日の日本では「無農薬」「減農薬」を謳うことは認められていません。しかし、中には無農薬にこだわって栽培されている生産者さんもいます。
オーガニックは非常に時間と手間がかかっているため、一般食品と比べるととても高価です。しかし、それでも健康面や安心のためにオーガニックを選択する人が増えているようです。